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ジョセフのエッセンスを受け取るシーザー

上田:あの20話は泣くシーンがいっぱいあるんですけど。最初はあの神砂嵐を受けちゃってボロボロになってるのに…俺もう今話しながら泣きそうなんだけど(笑)

佐藤:へへ(笑)

上田:息も絶え絶えの中で殴ろうとして、空振りするところあるじゃん。あそこがもう。

佐藤:音も「パスン」って響いてるんですよね。

上田:そうそう。

佐藤:柱の男って人間を吸収するけど、波紋があるからシーザーたちは吸収されないんですよね。波紋を帯びずに殴ってるのに吸収しない、あのワムウが認めてくれてるって感じがすごく嬉しかった。

上田:そうだね。

佐藤:あえて波紋を帯びずに殴りにいって、フラッとなった時ワムウがもうアイツは終わったってなって、でもそこからぐうっとまた行くじゃないですか。

上田:足で支えてね。

佐藤:あのエッセンスってジョセフのものなのかなって僕は思っていて。

上田:へえ。

佐藤:騙しの手口じゃないですけど「へへーん!狙い通りだったぜ!」のジョセフのエッセンスをシーザーなりにもらってたんじゃないかって。

上田:なるほど。

佐藤:それで、ピアスだけはっていう気持ちだったんじゃないかな。

上田:深いね。読み込んでるねえ。

佐藤:いや、本当かどうかはわかんないですけど。

上田:でもそう言われるとね。そう信じて演じてたんだから、それはそれで成立してるんですよ。

佐藤:せめてこれだけは、っていう自分が認めた男に対する執念はああいうところに出てたんじゃないかな。

シーザーが上からジョセフとリサリサを見ているような感覚

佐藤:シーザーが死んだ後も、当然なんですけどスタジオには演者が残ってるじゃないですか。

上田:うん。

佐藤:僕が(シーザーが)死んだ後に席へ戻って、遠目に杉田さんと田中さん、ジョセフとリサリサがシーザーを探してくれてるところとかを見るにつけて、なんか不思議な感じがしてて。あの世とこの世の中間にいる、みたいな。

上田:ああ、そっか。

佐藤:シーザーが上からジョセフとリサリサを見ているような感覚。

上田:おお。

佐藤:すーごい変な感じで見てたんですよ。

上田:9話の後の興津和幸(ジョナサン役)と同じじゃないですか。

佐藤:はい。何か、そんな感じで。

上田:はー。やっぱり全力で演じてるからそういう精神状態になるんだね。

佐藤:録り終わった後はもう何も残ってなかったですね、僕。正直、20話でもう声が出なくなってもいい!くらいの。全部出しちゃえと思って。

上田:はー。

佐藤:だから僕はもうその日、収録の後はもう使い物にならなかったですから(笑) それくらいの気持ちでやりました。

上田:うん、それは伝わってる。あの、これラジオだからあれなんだけど、今語ってる佐藤君の目から涙が。

佐藤:なんか思い出しちゃって(笑)

上田:うん(笑)


佐藤「演じられて幸せでした」監督「だろ?」

佐藤:シーザーの音楽がね、もうリハのブイに入ってて。

上田:あ、そうなんだ。

佐藤:こんな美しい音楽の中で俺は逝くんだと思ったらなんかざわざわしちゃって。手前味噌ながら泣いちゃいました。

上田:ふふ。

佐藤:後からあれがシーザーの為に作られた曲だとわかってびっくりしたんです。打ち上げで監督に「僕、あの中で演じられて幸せでした」って伝えたら…「だろ?」って言われて(笑)

上田:へっへっへ(笑)

佐藤:「こっちはあそこに帳尻合わせてやってきたんだ、良かっただろ?」って。そんな素晴らしい環境の中で演じられたっていうのはもう、役者冥利に尽きる。その一心ですね。

上田:伊丸岡くん(シュトロハイム役)があの20話を見てて「絵、音、芝居、すべてが完璧でした」って言ってたんだよね。僕もそれは思う。音から絵から、明夫さんと佐藤君の掛け合いから何から。特にワムウがシーザーを戦士として認めて声をかけるっていうね。全部含めて、頭一つ抜けてる回だなって思った。

佐藤:あの、一個だけちょっと。

上田:うん。

佐藤:打ち上げの時にワムウの大塚明夫さんにお会いした時「ありがとうございました」って伝えたら「ああ。ごめんね、殺しちゃって」って(笑)

上田:はっはっは(笑)

佐藤:そう言われたのが印象に残ってます。



(第21回へつづく)