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カーズ戦の井上和彦について

上田:林さんの思う印象的なシーンはありますか。

林:カーズのどんどん悪くなっていく姿ですかね。

上田:(笑)

林:最終的には宇宙までいっちゃう規格外のところだったりとか(笑) 井上和彦さんって僕のイメージでは「悪役をやる」というよりは…

上田:そうなんですよ。

林:ね。悪役よりは善人の役どころが多いイメージがあるんです。

上田:僕も和彦さんがヒーロー役をバリバリやってた時代にアニメを見ていた世代だから「永遠の主役声」のイメージ。

林:その意外性が面白かったりするんでしょうね。




上田:ご本人も「主役でもちょっと悪い感じのする役」はたくさん演じてこられてるだろうけど、後半のあのカーズの…何て言ったらいいのかな(笑)

林:はい(笑)

上田:どんどん嫌らしくなっていく感じとかは、ご本人が楽しんでやってる感じがあって。

林:最初はそんな風じゃなかったのに、どんどん悪くなっていく感じですよね。面白かった。

上田:究極の生物だから頭の中身も達観した感じにいけばいいんだけど、どんどんゲスの方にいってる。

林:はっはっは(笑) 自分の力を過信しちゃったところがあるんですかね。

上田:本来は冷静なところがあったんだろうけど、そこに手が届きそうになったところから狂気に走っていくっていう。実際に力を得てしまってね。あれをワムウが見たらどう思うだろう。

林:言葉出ないですよ。

上田:戦っても絶望感がありますよね。

林:圧倒的な力で。敵うはずがないだろうっていう。

上田:あの場面でスモーキーが逃げるんじゃなくて、逃げていくジョセフを追いかけていく勇気はすごいなと思いましたよ。後ろからあの、怪物みたいなのが追いかけてくるのが見えてるのに。

林:それぐらいジョセフに対して熱い気持ちを持っていて、おおげさに言うと無償の愛を持っているのかもしれない。恩人のジョセフにどうしても伝えたいと思って追いかけるスモーキーの姿には心打たれたところがありましたね。

上田:ジョジョの第一部、第二部を見ていると、非常に恐ろしい場面に直面した時に逃げ出してしまうキャラは悲惨な末路を辿るんですけど。そこで逃げずに立ち向かっていったキャラはたとえ亡くなってしまっても尊厳をもって亡くなったり、立ち向かったことでその後の人生が大きく変わるんですよね。




林:そうですね。

上田:スピードワゴンもそうだしスモーキーも。

林:スピードワゴンやシュトロハイム、最後の場面にいる人たちってみんな百戦錬磨じゃないですか。そこに街の荒くれ者だった一般人であるスモーキーが混じっているっていうのは、意外性があって面白いところですね。

上田:「意外な人が関わっていく」のが魅力の一つかもしれない。シュトロハイムとか、普通の漫画だったら異常な人って感じで終わってるところを、最後の戦いに付き合うまでになるとは誰も思わないじゃないですか。

林:うん。最後の最後までいましたからね。マグマのシーンとか。

上田:スモーキーもジョセフに会わなかったら。

林:ただの一般人で終わってましたからね。最終的には…州知事でしたっけ

上田:市長、市長(笑)

林:えー、ちょっと間違いがありましたけども(笑)

上田:アニメ版のカットがね、大統領かな?って感じになってましたから。

(3/3へつづく)