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上田耀司:スタッフさんなんかとお話は、なさいました?その中で印象的なお話とかは。

子安武人:色々話したけど「ディオが子安さんで良かったです」って言われたのはすごい嬉しかったね。何よりも、第1話の収録の後に川澄ちゃんに「もう、ディオすごいよかったー。私が考えてたディオより子安さんのが素敵だったー」みたいなことを言われたときに「これはいけるな」「これで9話もつな」と。

上田:はっはっはっは(笑)



子安:誰の言葉より嬉しかったね。川澄ちゃんはすっごいジョジョの大ファンで、とにかくジョジョが好きで。
演じ終わってからはジョジョが好きって言ってたけど、それまではディオが好きだったんだよ。ディオに思い入れがあって。「ディオぴったりで、先輩にこんなこと言うのも何なんですけど、さすがだと思いました」って言われたときに、嬉しかったね。
ジョジョのマニアックなファンである彼女に「よかった」って言ってもらえたのがすごい嬉しくて。

上田:僕なんかも一緒にやらせていただいて、先輩たちの底力を見せつけられた気がしました。

子安:どんなところが?

上田:キャラクターの台詞が入った時のパワーが、こう…投げてきて、こっちが受け取る時の衝撃がすごい強いんですよ。全力で戦わないと絶対勝てない。
アフレコの現場でもアニメと同じ現象が起きているっていうのをすごい感じて。声優としてもディオっていう敵と戦っていくというか。それがすごく面白かったです。

子安:そういうのがわかって返してくれる役者さんがいたからこそ、成立したのかもしれないね。それがわからないと、掛け合いにもならない一方通行のお芝居になってしまうから。
「こうきたら、返せよ」っていうボールの投げ方なわけじゃないですか。それが返ってきたとき、すごい気持ちいいのね。投げ返せよ、打ち返してこいよ、って投げて返ってきたときの、あの「わかってるな」「返してきたな」っていう気持ち良さったらなかった。
当たり前のことなんだけど、なかなかできない現場が多くなってきている中で、あの現場はすごく素敵だった。

上田:岩波さんといろんな作品をやっていらっしゃるじゃないですか。

子安:わりとお付き合いがありますね。

上田:今回、子安さんから見て「いつもの岩波さんと違うな」と思われた部分というのはありますか。




子安:いやーいつもの岩波さんのスタンスだったと思うけどね。
ただ、いろんなジョジョ愛のスタッフがいるから、それをひとつにまとめて俺たち役者に持っていかなければならない、音響監督さんっていわゆる中間管理職的な、潤滑油的な位置じゃないですか。
そういうところで言葉を選びながら、的確に伝えるっていう能力は岩波さん高い人だから。裏でどんな話をしているか、厳密には知らないけども、俺たちには冗談も交えながらわかりやすく伝えてくれて。結果として、収録は…

上田:めちゃくちゃ早い。

子安:異常なる早さだったよね。あんだけこだわってる番組なのに。あんなにこだわってるのに二時間~二時間半で録っちゃうんですよ。異常ですよ。みんなほとんどNG出さないし。
そういう現場の指揮を執ってる、岩波さんの能力も高いんじゃないですかね。

上田:イメージは明確にあるんだけど、それを押し付けるのではなくて、必ずみんなが何を出してくるのかを見るっていう、そのスタンスがキチッとしてて。

子安:本当にあの人はね、心が広い。器がでかいね。役者なんてみんな、いろんな考え方持っててフリーダムな人ばっかりだから。
みんな一つのマイクに向かってね、どこぞのなんとか劇団とかの芝居を持ち込むわけじゃないですか。まとまるわけがない。

上田:ああ…(笑)

子安:みんな違うお芝居をして、それを一つの作品として仕上げなければいけないっていう作業を、まず一番初めに指揮ってるのが音響監督さんなわけですよ。そりゃあ能力高くなきゃできないって。…こんな感じですかね。

上田:はっはっは(笑)

子安:岩波さん、相当上げときましたよ。

上田:褒めると必ず落とすのやめてくださいよ(笑)

子安:だって恥ずかしいんだもーん。そんな、人褒めたってねえ。俺のことは褒めてくんねーし。

上田:そんなことないですよ(笑)




上田:こういう訊き方もあれなんですが、ディオを演じられて、どうでしたか。

子安:幸せだった。これだけは本当に、間違いなく。演じられて、終わって、体の中からディオが出ていっちゃって、この段階が今いちばん幸せ。
この状態が何を表すのかというと、作品のディオをやりきったっていう証。自分の中で何か忘れているものがないっていう、この状態が気持ち良くて、清清しいのね。
僕、すごくディオに運命を感じていて。僕の中ではディオが呼んでくれたんだと思ってる。
役者として、どんなにやりたくてもできない役ってあるじゃないですか。「この役はどうしてもやりたい」「この作品はどうしても出たい」って思っても、なぜか出ない。頑張ってオーディション受けても落ちる。でも、どんなに落ちても、たまたまその時オーディションに出られなかったとか不遇があったとしても、その役が巡ってくる時ってあるんだよね。
そういう時って、絶対に向こうが呼んでるんだ、どうしたって離したくないんだと。そういうのが、今回のディオに当てはまるっていうか。ディオが呼んでくれたような気がしてて。僕はディオに選ばれたと思ってるから、すごく誇りに思ってるし、すごく幸せだった。

上田:なるほど。

子安:これ、何が言いたいかっていうと、もしオーディションに落ちたら「向こうが呼んでなかったから」って簡単に諦められるってことなんだよ。
しょーがねーよな、呼んでないんだから。逆に言えば「見る目ねーな」と。俺を選ばずにあいつを選んだってことは「この役は見る目がねーな」

上田:いい話したあとに、必ず落とす(笑)

子安:だって恥ずかしいんだもん(笑)そうやって役者はね、都合のいいことだけを信じて頑張っていくんだよ。

上田:それは大事なことですけど。

子安:傷つきたくないじゃん!この歳になると平気でオーディション落ちるからさ!そのたびに傷つくからね。わかってないんだよスタッフさん。呼んでおいて落とすの、やめてもらいたいんだよね。傷つく!っつーの。…キツツキ!になってる。

上田:(笑)

子安:まぁだからね、ディオ役は本当に幸せでした。